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森 好治郎

アナリスト森 好治郎 氏のマーケットウォッチをアーカイブしています。

11月14日 12:02 学習効果により冷静な市場参加者増える

昨日の米株式市場は引け前1時間で急反発し、過去2週間で最大の値上がりを演じた。

NYダウは一時7,965jと先月10日以来の8千ドル割れとなり、バーゲンハンティングの買いを誘ったほか、原油相場の反発を受けてエネルギー関連株に買いが集まり、8,876jまで急伸、終値は前日比+552.59jの8,835.25jで着地している。

もっとも、NYダウは10月1日以降の32営業日で400j超の上昇が5回、400j超の下げが7回と、乱高下を繰り返しており、市場安定とは程遠い状態にあることを示している。 

米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が10月17日付けNYタイムズの論説で「コマドリが鳴くのを待っていたら春が終わってしまう、現金を溜め込んで模様眺めしないで、今すぐ保有株式を増やせ」と強い買い推奨をしていたが、押し目買いを狙った多くのファンドはボラティリティーに負けて動けなくなったとの報告がなされている。 

長期的な視点から株価が割安と判断しても、ボラティリティーに耐えられない投資家が多いのが実情であり、バフェット氏のように余裕資金を持っていなければ、大津波を凌ぐことはできないのである。 

今朝の日経CNBC「朝エクスプレス」では、昨日の米国株の引け際の急反発に対して懐疑的な見方を示すアナリスト等のコメントが紹介されていたが、学習効果により冷静な市場参加者が増えているとの印象を持つことができた。

OECD(経済協力開発機構)が昨日公表したエコノミック・アウトルック(経済見通し)は、世界的な金融市場の混乱や住宅市場の調整が長引き、加盟30カ国の主要国経済は「すでに景気後退に入った」と分析している。 OECD見通しは2009年の加盟国全体のGDP成長率を前年比▲0.3%、日米欧の成長率も全てマイナスに下方修正し、景気後退は少なくとも来年半ばまでは続くとしている。

これから世界同時不況に突入する状況下、持続的な株高を促す投資テーマを見出すのは困難であり、市場参加者にとっての当面の優先課題は景気後退の深さや長さを見極めることであるといえよう。

足元では、危機対応の国際協調として大胆な利下げなどの金融政策に続き、財政政策を通じて世界経済を下支えする動きが出ており、「ゴルディロックス・エコノミー」を背景に醸成された複合バブル崩壊に伴う収縮圧力をどのていど緩和できるかが最大の焦点となってこよう。

米商務省が昨日発表した9月の貿易収支は、世界景気の減速で輸出入ともに減少傾向が強まっていることを示した。 輸出金額は前月比▲6.0%と2001年9月以来の減少率、輸入金額は同▲5.6%と過去最大の減少率となっており、同統計結果は米家計部門の過剰消費を支えに拡大路線を辿ってきた世界経済の調整の深さを暗示しているといえよう。

マコーミック米財務次官は12日の講演で、「世界経済は過去5年間、いろいろな意味でゴールディロックス経済だった。高成長、低インフレに加え、金融危機もほとんどなかった」としたうえで、「世界経済は実際には米国の消費の伸びと経常赤字の拡大に過度に依存し、多くの国で経常黒字が拡大していた」と述べている。 つまり、今回の金融危機では、サブプライムローン問題の震源地である米国が悪者にされているが、同次官の発言は世界経済にも責任があるという反論でもある。

このあと同次官は、「米国経済、世界経済は急速に減速しており、米欧や多くの新興国で今後数四半期、景気がさらに減速する兆候が明らかにある」との認識を示し、各国に対して内需拡大策(財政出動)を暗に要請しているのである。

世界的な景気後退局面における為替相場は、ポリシー・ミックスの観点からはケース4の「積極財政」+「低金利」の組合せにより「通貨安」が促されやすく、ファンディング通貨の位置付けにある『日本円』は相対的に「通貨高」圧力が掛かりやすくなっているといえよう。

今回の金融サミットでは、麻生首相が新興国支援でIMFに対し外為特会より最大1,000億jの資金融通を行う用意があることを正式に表明すると報じられているが、これも市場安定を通じた円高圧力の緩和を狙った方策の一つとすることができよう。

昨日のドル/円は94円Midでは介入警戒感から買い戻しが優勢となっていたが、当面はこうした介入警戒感を活かした口先介入で凌ぐことになろう。 何故なら、実弾介入に踏み切れば市場に対して防衛ラインというターゲットを示すことになり、投機の対象とされてしまうため逆効果となってしまうのである。

実弾介入のやり方を忘れたのではなく、むしろ単独介入は一時凌ぎにしかならないということを理解しているからこそ安易に動けないということである。

いずれにしても、ポリシー・ミックスに基づく政策変更を伴っていなければ、円安反転の流れを作り出すことは不可能であり、仮に実弾介入に踏み切ったとしても、それは豪中銀と同様のスムージング・オペ(水準訂正ではなく、スピードを和らげるやり方)という位置付けとならざるを得ないことは念頭に置いておきたい。

さて、本日は今週の経済統計の中で最も注目度の高い米小売売上高が発表される。10月の小売売上高は前月比▲2.0%と予想されており、9月の同▲1.2%からさらに悪化する見通しとなっている。

右グラフ(pdfご参照)は米小売売上高とNFP(非農業部門雇用者数)の増減を示したものであり、NFPの減少と小売売上高の減少がパラレルに推移していることがわかる。

足元では米雇用情勢の悪化が鮮明になっているうえ、住宅価格や株価の下落に伴う逆資産効果により、米GDPの7割を占める個人消費の減少は必至の情勢となっている。

今週は米家電量販大手ベストバイの業績悪化、米小売2位のサーキット・シティ・ストアーズの破たんなど、個人消費の減少の影響が表面化している。(皮肉なことに米ディスカウント大手のウォルマートの売上高は伸びている)

いずれにしても、昨日発表された米新規失業保険申請者件数は、51.6万件と前週から大幅に増加し、米同時多発テロ後の2001年9月29日の週以来、7年ぶりの高水準となっている。 そして、米雇用市場の基調をより正確に示すとされる新規失業保険申請者件数の4週間移動平均は49.1万件と、1991年3月以来の高水準となっており、雇用情勢の悪化に伴う個人消費の一段の減少は避けられない情勢にあるといえよう。

但し、本日はG20緊急サミットという政治イベントが開催されているため、仮に小売売上高がネガティブな内容になったとしても、米雇用統計の発表後のように逆行高となる可能性には留意したい。

(11月14日 11:30記)

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